「めーさん、これ、気づいてる?」
芝はりイベントのあと、地元の役員の一人がニコニコしながら中庭の扉を開けました。
見上げるとそこには満開のコブシが。
何があるというわけでもない、年中薄暗い中庭です。
でも校舎の屋根のさらに上空には、コブシとヒヨドリの秘密の世界がありました。
(今年は、宝篋山のコブシに会いに行こう)
なんとなく、二人で登ることになりました。
宝篋山と小田の暮らし
その日はふもとからでも、山肌に白いコブシが点々と見えました。
宝篋山を流れる主要な沢のひとつ、「大沢」に沿って山道を登ります。
太く長い木々の根が、湿った岩を抱きかかえるように、縦横無尽に巡っていました。
大沢の流れは小さな滝を作りながら、やがて麓のため池「ザル池」に注がれていきます。
「宝篋山は入会地だから、昔はみんなで柴やキノコを取り、共同で守ってきた」
「俺はまだ子どもだったから、よく遊びで登ったよ」と同行の役員も目を細めます。
コブシの生き方
歩いていると、いたるところにコブシが咲いていました。
もう、満開といってもいいでしょう。
でも周りの木がもっと高いので、低いコブシはあまり日光をもらえません。
中庭で見たのと同じように、何年も生きてきた巨木だけが高く高く幹を伸ばしています。
その枝の先の花々が春霞のように、人の手がとうてい及ばない空に溶けていました。
何度も繰り返される急斜面ですっかり息が切れてきたころ、
少し開けたところでのびのび育ったコブシに出会いました。
「わぁ、キレイ!」と女性グループもやってきて、足場を譲り合いながら撮影します。
「じゃあまたぁ!ありがとうございましたぁ!」と先に登り始めた彼女たちに手を振り、
わたしたちも歩みを続けました。
トレッキングマップに記されているコブシの群生地は、
つくば市街地が見渡せる、見晴らしのよい尾根にありました。
光をふんだんに浴びられるコブシの枝は、複雑な曲線を描き四方に広がるようです。
そして花はほんの数日で茶色く枯れ、葉が一斉に広がる新緑の季節を迎えます。
街路樹で見る姿とは少し違うコブシに、ほんの少し触れたような気がしました。
花のまち、小田
帰りは「昔からよく使ってた道を整備した」という小田城コースから下りました。
このコースは比較的なだらかな「七曲」「堂平(どんでら)」を経て、
小田東部のお不動様や芝桜の育成地を通ります。
宝篋山ではこれから、コブシに代わり山桜が咲き始めます。
芝桜やりんりんロードのしだれ桜は、満開まであと一週間ほど。
花に彩られながら、小田の春が進んでいきます。

























